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【活動報告】5月研修会

5月30日(日)、児童虐待と虐待発覚後の対応という題で、BBS会員の川田千穂さん(23期)、服部英美里さん(23期)がお話をしてくださいました。研修会はZoomで開催され、19人が参加しました。

 

●虐待としつけの違い、定義

  はじめにアイスブレイクとして、「しつけ」と「虐待」の違いについて、ブレイクアウトルームに分かれて話し合いました。そこで出た意見には以下のものがありました。

・子供が、親が自分のために叱ってくれていると思えれば「しつけ」、そうでなければ「虐待」

・暴力があれば「虐待」

・衣食住のような生活の基本ができていなければ「虐待」

  他にも、「怒る」と「叱る」の違いや、習い事をやめさせてくれないことも虐待にあたると聞いたというお話もありました。

  このようなアイスブレイクを踏まえた上で、「児童虐待」と「しつけ」の定義を確認しました。

・「児童虐待」・・・大人が子どもに対して力を乱用すること。英語で"Child Abuse" 。

・「しつけ」・・・子どもが自分で自分をコントロールできるように落ち着いて教えること。

  つまり、「子どものため」と言っても、子どもを傷つける教え方はしつけとはいえない、ということでした。

 

●虐待の種類

  虐待には、身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、ネグレクト の4種類があります。厚生労働省によると、令和元年の児童相談所での虐待相談件数は193,780件あり、その割合が高い順に心理的虐待(56.3%)、身体的虐待(25.4%)、ネグレクト(17.2%)、性的虐待(1.1%)となります。また、虐待相談’対応’件数は年々増加傾向で、令和元年に過去最高となりました。この理由に心理的虐待の相談の増加や、警察からの通告の増加などがあげられるそうです。

 

●虐待された子どもへの影響

  身体への影響と情緒・行動への影響があります。身体への影響には、怪我や骨折や栄養失調だけでなく、妊娠や知的発達の阻害や身体の汚れなども含まれます。情緒・行動への影響には、人間関係をうまく築けない、多動、暴力的になるなどがあります。

 

●虐待の状況

  厚生労働省による平成30年度のデータを見ると、ほとんどの子どもは実母・実父から虐待を受けていることがわかります。親が虐待をしてしまう理由として、育児への不安、被虐待経験、自分の行動が虐待であるという自覚がないなどがあるようです。

 

●虐待への対応

  ここで、「あなたがもし虐待を目撃したら、通報しますか?」という議題で再びアイスブレイクを行いました。ここでは、本当に虐待かどうかの確信が持てないと通報しづらい、児童虐待防止法の通告義務により通報する、というような意見が出ました。

  その後虐待相談の対応の流れを図で確認しました。「通告→調査→一時保護→措置」が一般的な流れであるようです。児童相談所虐待対応ダイヤル#189(イチハヤク)も教えていただきました。(ただし、接続料金の説明が長いなどの理由から接続率がほんの25%であるという課題があるそうです。)

  ここでアメリカの虐待対応について説明していただきました。アメリカでは、虐待数は多い一方、児童相談所体制の充実や予防的支援の重視など、対応が充実しているそうです。また虐待を見過ごした人も罰せられるという意識があり、社会全体で子どもを守ろうとする意識が高いということでした。現在日本では、相談所などの専門的な機関のみが対応しているという状況であることは否めず、社会全体で対応しようという意識はまだ足りないと思われます。アメリカとの比較から、日本の課題を見ることができました。

 

●虐待対応における優先事項は?

  3度目のブレイクアウトルームに分かれてのディスカッションでは、「早く児童を保護すべきか、親子関係を継続させるべきか」という議題が示されました。これについては、どちらかの結論を出すというよりは、一旦通報し、子どもや親の精神状態が落ち着いてから、親と離れて暮らしたいか、一緒に暮らしたいかの希望を聞くといった柔軟な対応がよいという意見が多く出ました。

 

●まとめ

  最後に、「BBS会員として 保護された子どもにどう向き合う?」という議題でブレイクアウトルームに分かれて話し合ったのち、全体で共有しました。以下のような意見がありました。

・学生ならではのBBSなので、身構えずに等身大で接する。

・「当たり前」は人によって違うので、押し付けない。

・踏み込みすぎず、子どもが寄ってきたら同じくらい寄る。

・少し長く生きている者として、子どもに将来の希望をもたせるような話や行いをする。

 

  児童虐待についての基本的な知識を知り、データから虐待の実情を読みとってさらに知識を増やすことができました。また、様々な議題について話し合うことで、自分の意見が深まっていくのが感じられました。BBS会員の実体験を聞いたり、最後にBBS会員としての関わり方について意見を共有したことにより、責任感が強くなり、虐待対応について関心が高まりました。一人ひとりがテーマについてじっくりと考えることができた有意義な研修会でした。